歯周病治療
歯周病とは
中年以降に多い、歯の周囲組織が徐々に破壊されていく病気
歯周病は成人に多く見られる進行性の病気で、歯を失う2大疾患のひとつです。
歯周病は発症に年齢が関係しており、主に40代から進行します。歯周病細菌が歯の周りで増殖して、歯肉や骨を溶かしその結果、骨の支えを失った歯が抜けてしまいます。
平均寿命80歳を超える日本人が、生涯を快適なお口で生活するためには、歯周病と立ち向う意識的な行動が必要です。何もせず生活しているだけでは、歯周病を防ぐことは大変困難です。
歯周病は認知症や糖尿病の原因になる可能性も
歯周病はお口の問題にとどまらず、全身に悪影響を及す事が判っています。歯周病により生じる炎症性の物質や毒素・細菌そのものが、血管を通して全身に移動して悪さをしてしまうのです。
下記の持病や症状のある方は、歯周病治療も積極的に行うことがとても大切です。ぜひお医者様とも相談されて下さい。
こんな持病や症状がありませんか?
- 認知症
- 狭心症・心筋梗塞
- 脳梗塞
- 糖尿病
- 妊娠
- 誤嚥性肺炎
- 骨粗鬆症
- 関節炎
- 腎炎
- 肥満
歯周病予防は介護予防にも
日本人の健康寿命(介護を必要としない自立可能な寿命)と生命寿命の間には、約10年の開きがあり、長すぎる介護期間が様々な問題を引き起こしてきました。膨れ上がる介護医療費により現在の保険医療制度は2025年に破綻すると言われており、いかに健康寿命を引き延ばすかが、日本の医療行政の課題でした。
そこに近年「歯科で定期健診を受けて適切に歯周病と歯の治療をコントロールしている人は、著しく健康寿命が延伸している」ことが明らかとなりました。
厚生労働省はこの事実を大変評価しており、2018年より国策として、医師に対し管理の悪い患者さんを積極的に歯医者さんに紹介するよう要請し、国の制度も改めました。歯科においてもそのような患者様を積極的に受入れるよう要請されています。
以前は、「歯周病が全身疾患に影響する」と言う話は、あたかも「歯科業界が医療業界内での自らの立場を高めようと大げさに言っている」と思われがちでしたが、現在は全く状況が異なり、国やお医者様から「全身のために、早く歯周病をどうにかして!治療して噛めるようにしてあげて!」と、求められるようになってきました。お体のためにも、ぜひ歯周病を治しましょう!
歯周病の仕組み
歯肉炎(歯周病の初期段階)
歯周病とは、歯茎(歯の周りの組織・歯周組織と呼ぶ)のあたりで侵入増殖を繰り返す細菌と、その細菌を倒そうとする免疫(体に元々備わる防御機構)との戦いについて、名付けられた病名です。
両者の戦いが短期決戦で終了し、細菌が敗れて免疫が勝てば、一時的な歯肉の炎症反応(軽い痛み、腫れ、赤らみ)のみで、元に治ります。これを「歯肉炎」と呼びます。歯肉炎は歯周病の初期段階と言えます。
歯周炎
しかしながら、両者の戦いが長期化すると、事態は悪化します。細菌と免疫は、毒素や炎症性物質と呼ばれる、砲撃・空爆のような「飛び道具」を用います。これらの武器による攻撃は、ターゲットを選択的に攻撃せず、その周囲を巻込んだ破壊を伴います。戦いが長期化すると、両者の生死のみならず、戦場である歯周組織も大きなダメージを受けて、失われます。
このような、歯周組織の欠損まで進行した状態を「歯周炎」と呼びます。一般的に「歯周病・歯槽膿漏」というと、この「歯周炎」まで進行した状態を指します。
重い歯周炎
戦場となった歯周組織が破壊されると、下記のような様々な問題へと繋がっていきます。
様々な問題が…
- 痛み・腫れ・出血
- 噛むと痛い
- 冷たい物がしみる
- 物が挟まりやすくなる
- 歯茎が下がり見た目が悪い
- 歯並びが悪くなる
- 歯がグラグラする
- 歯が抜ける
いかがでしょうか?中には覚えのある症状もあるのではないでしょうか?
実は、壮年期以降に抱えるお口の悩みのほとんどは、歯周病と関連していることが多いのです。
このように、歯周病というのは、細菌だけでなく、ご自身の免疫も、歯周組織を破壊する病気なのです。そして、歯周組織の破壊が、壮年期以降に抱えるお口の悩みのほとんどと関わっていることがわかります。
歯周病治療の流れ
歯周病の治療は、物騒な例えですが、戦争のプロセスとほとんど一緒です。大きく4段階に分れます。ご自身がどの段階か、しっかりと意識して治療に臨まれることが大切です。
- ❶歯周基本治療:
- まず圧倒的優勢な状態に
- ❷歯周外科治療:
- 残党討伐で、完全勝利
- ❸歯周補綴治療:
- 戦後処理・復興再建
- ❹メンテナンス:
- 持続可能性と平和維持活動で再発防止
こんな方は歯周病治療が必要
- 歯茎から出血することがある方
- 歯茎が腫れている方
- 歯石がついている方
- 冷たいものがしみる方
- 歯茎が下がってきたと感じられる方
- 口臭が気になる方
- ものがはさまりやすくなったと感じられる方
- ものがはさまりやすくなったと感じられる方
- 歯が長くなったような気がする方
- 歯が動いて硬いものが噛みにくい方
- 歯茎から膿が出る方
- 歯並びがずれてきた方
flow1. 歯周基本治療
免疫に圧倒的優勢な状況を!
歯周病戦争の決着は細菌感染と免疫双方の戦力バランスで決まります。したがって、患者様と歯科医師は、免疫が圧倒的優勢となるような環境整備を行います。では、具体的には何をしたら良いのでしょうか?
(1)歯磨き習慣の改善
患者様自身の適切な歯磨き習慣は、歯周病戦争における「ゲームチェンジャー」。効率的で必要不可欠な決定的主戦力です。実は、この戦力さえ安定的に手に入れば、ほぼ勝利は決まったも同然です。
逆に言えば、この戦力が中々安定的に維持されないことが、歯周病治療の問題といえます。これまで1日1回、テキトーに磨いていた方にとって、毎食後磨く事はとても困難です。
そこで、歯医者さんを利用して欲しいのです。定期的に歯医者さんを訪れている方は、訪れていない方と比較して、明らかに良好な清掃状態を維持できていることが明らかになっています。
歯医者さんに通わず、お一人で歯周病戦争と立ち向かうことはほぼ不可能と言えます。ぜひ一緒に、まずはここを乗り越えましょう!
(2)禁煙・生活習慣の改善
世界保健機構(WHO)のホームページには「歯周病の主原因は、口腔衛生環境の不良と喫煙である。」と記載されています。本気で歯周病を治したいなら、禁煙は絶対必要です。
禁煙外来についてもっと知りたい!そんな方はこちら
https://sugu-kinen.jp/
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-006.html
https://sugu-kinen.jp/
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-006.html
また、糖尿病や心臓病などは、歯周病と相互に影響し合い、互いにどんどん悪化させる原因となります。歯周病と全身疾患の管理はセットで行いましょう。
(3)プロによる清掃
取り残した歯の汚れは、1週間ほどで固着し、そのうちカチカチの歯石となります。
歯石や、歯肉と歯の間の歯周ポケット内の汚れは、ご自身で除去することは出来ませんので、定期的に来院して頂き、我々プロが清掃します。
歯茎より上の清掃は患者様が担当し、歯茎より下の清掃は、我々が担当するとお考え下さい。
(4)虫歯・咬み合わせなどの治療
歯周病を悪化させる原因となる他の病気も治療が必要です。この段階では、免疫の働きを阻害しないようにするための最低限の一時的な治療(虫歯治療や最低限の噛み合わせの治療など)を行います。
そして、残念ではありますが、明らかに残す事の出来ない歯をこの段階で抜歯することも、他の歯を生かすために、とても大切な治療です。
私たちにとって最も守りたい歯は、細菌に乗っ取られてしまうと、細菌のベースキャンプとして機能してしまい、もはや害悪でしかありません。気持ちは名残惜しくとも、賢く理性で、切り捨てる決断が必要となります。
この判断が出来なければ、残念ながら歯周病戦争の勝利をつかむことはできません。世の中の多くの患者様が、この決断を出来ず、妥協策に明け暮れ、緩やかな敗戦を待つ状況となっています。ここが踏ん張りどころです。
flow2. 歯周外科治療
局所に潜む残党討伐で完全勝利!
ほとんどの場所で炎症が治り、もはや終戦であろうと思った矢先、一部だけ相変わらず出血します。一体ここでは何が起きているのでしょうか?
歯周病戦争の結果、荒廃した歯茎の一部は形がいびつとなってしまい、どうしても磨き残しが出来てしまいます。ここに歯周病細菌の残党が潜んでおり、すぐに悪さをしてしまいます。
そのような隠れた巣穴を、一つ一つ残党討伐していくステップが歯周外科治療です。
いびつな形となった骨や歯肉の形を手術で整えて、歯ブラシが当たりやすい環境を整備します。
いびつな形となった骨や歯肉の形を手術で整えて、歯ブラシが当たりやすい環境を整備します。
お口全体の炎症が全て治った時点で、歯周病の治療は完了。ようやく歯周病戦争は終戦を迎えました。
flow3. 歯周補綴治療
戦後荒廃地の再復興・再建築
ようやく歯周病戦争が終戦しましたが、それで終わりではありません。お口の中では、歯周病戦争で荒廃した荒れ地に、生き残った歯がかろうじて立っています。彼らはグラグラで、一部欠けたり、傾きながらも、なんとか貴方の生活の機能を支えてくれています。しかし、手負いの彼らだけで今後の貴方の生活を支えて行くには、あまりにも酷な話で、無理があります。
そこで、グラグラの歯たちを被せ物で連結して、まるでスクラムを組む様に、お互いに支え合う様な強固な構造としたり、失った歯をインプラントで補って、残った歯の負担を少しでも減らしてあげるような処置を行います。
インプラントはしっかりと骨に固定され、単独で人工歯を支えます
周囲の歯にかかる噛み合わせの力の負担を減らし、歯を長持ちさせやすくしてくれます。
flow4. メンテナンス
持続可能性と
平和維持活動による再発防止
平和維持活動による再発防止
歯周病が完治し、失われた機能を回復した後も、まだ重要なステップがあります。お口の中の歯周病細菌は、完全に駆逐することは不可能です。量は減りましたが、確実に残存しています。また細菌と免疫のバランスが崩れるようなタイミングで、歯周病は再発しかねません。特に、一度歯周病となった人は、再度歯周病になりやすいと言われています。
歯周病の治療、機能回復の治療をされた後には、必ずメインテナンス・定期健診に訪れ、清掃状態の維持と、早期発見早期治療の警戒態勢を維持しましょう。
よくあるご質問
- 虫歯ができやすい人は歯周病にもかかりやすいですか?開く
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虫歯のできやすさと歯周病のかかりやすさは別物です。虫歯も歯周病もお口の中の細菌によって引き起こされる病気ですが、それぞれ違う細菌が原因になっていますので、虫歯になりやすいからといって歯周病にもかかりやすいというわけではありません。逆に虫歯にならないからといって油断していると、重度の歯周病にかかってしまうケースもあります。ただし、ご家庭でのケア、歯科医院でのメインテナンスをしっかりと行っていれば、お口全体としての細菌を減らすことができますので、虫歯にも歯周病にもかからないようにすることは可能です。
- 口臭がとても気になります。歯磨きをしても匂っているようなのですが、歯医者で治りますか?開く
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歯磨きでも改善しない口臭は、歯周病治療をすることで改善する可能性があります。口臭、特にひどい口臭の多くは歯周病が原因となっていることが多いです。歯周病の口臭は、歯周ポケット(深い歯茎の溝)の内部の歯周病菌が原因になっていることが多いため、歯ブラシでは取り除くことができず、口臭もなかなか改善しません。歯周病の治療をすることで、口臭の原因となる細菌も減らすことができるので、口臭も改善していきます。
- 歯周病はうつりますか?開く
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唾液を介してうつると言われています。歯周病は、歯周病菌を原因菌とする感染症です。主な感染経路は唾液感染で、同じ食器の共有、キスなどによってうつることがあるとされ、家族間や夫婦間などで起こりやすいため、歯周病ケアをしっかりとして、お互いになるべくうつさないようにすることが大事です。
- 歯周病は遺伝しますか?開く
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歯周病のかかりやすさには遺伝が関係していると言われています。歯周病のかかりやすさ、体質といったものは遺伝が関係しているとされています。歯周病のかかりやすさを左右するのは、唾液の性質、歯周病菌に対する抵抗性、歯並びなどです。しかし、歯周病は生活習慣病としての側面が強い一面もあり、普段どのような生活を送っているかによって、歯周病にかかるリスクというのも変わってきます。そのため、たとえ遺伝的に歯周病にかかりやすい素因を持っていたとしても、きちんと歯周病対策をすることで健康な歯茎を保つことも可能です。
- タバコは少数なら歯周病のリスクを高めませんか?開く
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タバコは少数でも歯周病リスクを高めると言われています。タバコは、歯周病の大きなリスクファクターとなるものです。ヘビースモーカーほど歯周病のリスクが高くなることがわかっていますが、例え少量であってもリスクがゼロになるわけではない、と言われています。タバコを吸っている場合、歯周病の典型的な症状(歯茎からの出血や腫れなど)が現れにくくなり、初期の歯周病サインに気付きにくくなるため、発見が遅れがちになってしまう、というのも怖いところです。また、傷の治りが悪くなるため、歯周病治療をしても治療効果が現れにくくなります。健康な歯や歯茎を保つためには、できるだけ禁煙されることをおすすめします。
- 歯石を取った後から歯が冷たいものでしみます。歯が削れたのでしょうか?開く
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歯石を取って歯茎の腫れが引いたことによる一過性の症状です。歯石がついた状態の歯茎というのは歯茎が炎症を起こして腫れた状態になっています。歯石を取ると、歯茎の炎症が落ち着いて、歯茎が引き締まりますので、歯茎が下がってしまい、それに伴い歯根が露出して一時的に冷たいものでしみる症状が現れることがあります。ですがこのような症状は通常一過性で、適切な対処を行うことで落ち着いていきます。
症例ごとの具体的な料金
重度の歯周病からインプラント治療をした例をピックアップ
- 上下顎崩壊症例1開く
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体格が良く、咬合力の強い重度の歯周病男性。全体的にグラグラで噛み合わせが崩壊しているため、オールオン4を行なったケースです。
- 上下顎崩壊症例12開く
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歯がグラグラで食事が十分に出来ないケースを全体的にインプラントで治療したケースです。
- 下顎崩壊症例1開く
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歯周病が進行して噛めない状態をオールオン4で治療したケースです。
- 下顎崩壊症例2開く
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歯周病が進行している下の歯を抜歯し、オールオン4で治療したケースです。